どうしよう、どうしたらいいの。ただその二言しか頭に浮かんでこないクローディアは、心配そうに自分のことを見てくる兄たちからどうしたら逃れられるか、そればかり考えていた。

そんなクローディアの右肩に、淡い熱が灯る。右隣に座っているのはリアンで、兄たち同様に心配そうな目でクローディアを見ていたが、その瞳には兄たちにはない色があった。

「……まだ具合が悪そうだね、ディア」

「え……」

長い睫毛が縁取る、深い青色の瞳。それには泣きそうな顔をしている自分が映っていて、クローディアは思わず目を見張ってしまった。

リアンはクローディアに柔らかに微笑みかけると、流れるような動作で立ち上がった。

「寒い中外に出たからか、顔色悪いね。酷くなる前に戻ろうか」

そう言って、ここに来るまでに羽織っていた厚めの上衣をクローディアの肩に掛けると、ルヴェルグらに向かって一礼した。

「折角の晩餐ですが、見ての通り、ディアの体調が良くなさそうなので……お先に失礼させて頂きます」

「そうか。残念だが、身体が第一だからな。ゆっくり休めてくれ」

「僕は明日滋養のあるものを届けさせるとしよう」

「……お大事にね、ディア」

クローディアはこくりと頷いて、深々と頭を下げた。そうして顔を上げると、リアンの瞳とぶつかる。 

「行こうか、ディア」

リアンはクローディアの身体を支えるように手を添えると、外へと向かって歩き出した。その手つきはどこまでも優しく、温かく、ただただクローディアのことを労っているようだった。

突然アルメリアの名が出て、動揺してしまったクローディアのことを、リアンはどう思っただろうか。