「小さい頃はよく言われましたよ。僕と皇女殿下は兄妹同然だったので」

そう言って、ベルンハルトはリアンからクローディアへと視線を移すと、懐かしいものを見るかのように目を細めた。

「季節病でお祝いの席を欠席してしまい、申し訳ありませんでした。……結婚おめでとう、クローディア」

クローディアは緩々と首を横に振った後、ベルンハルトから差し出された花束を受け取った。既にオルシェ公爵家からは山のように贈り物を頂いているが、これはベルンハルトからの個人的なお祝いなのだろう。

クローディアは「ありがとう」と言うと、花束に顔を埋めて頬を綻ばせた。

「ベルはリアンと同じ歳なのよ」

「…ということは、今年で十七?」

「ええ。二人とも私の一つ上なのね」

ひとつもふたつも変わらないよとベルンハルトは笑う。つられるように笑っているクローディアを見て、リアンも唇を綻ばせた。

「いつでも呼んでくださいね、ヴァレリアン殿下。領地からすっ飛んで来ますから」

「──それを口実に勉強をさぼらぬように。ラインハルトが怒るぞ」

突如として響き渡ったのは、この場にいるはずのない人間で。
凛とした──けれども低くて落ち着くその声に、一同は声がした方を振り返る。