肩の辺りで切り揃えられている銀色の髪が、風で波打つように靡く。帝国の名門貴族・オルシェ公爵家が代々受け継いできた灰色の瞳は、美しき皇女夫妻へと真っ直ぐに注がれ、陽の光を受けて強く煌めいていた。

迷いのない足取りで夫妻の下へと着いた青年は優雅にお辞儀をすると、皇女には手の甲にキスを、その夫君の手は自身の額にそっと着けると、眩しい笑顔を飾った。


「お初にお目にかかります、ヴァレリアン殿下。ベルンハルト=オルシェと申します」

「お会いできて嬉しいです。ベルンハルト公子」

リアンは公子と軽く握手をすると、ふわりと微笑み返した。

ベルンハルト公子のことは勿論知っていた。帝国で一、ニを争う名門貴族・オルシェ公爵家の次期当主であり、クローディアとエレノスのいとこ。

直接会ったことはなかったが、その父親であるラインハルトとは、王国とオルシェ公爵領が隣接していることもあり、何度か公の場で会ったことがあった。

少女と見間違える美貌と、陽だまりのような笑顔。人々から愛されている、クローディアの夫候補だった青年。リアンはつい見入ってしまった。

「ふふ、似てますか? 僕と皇女殿下は」

そんなリアンを見て、ベルンハルトはくすくすと笑う。

「……ええ、似ています。兄妹だと言われても信じてしまうくらいに」