──あいしている。そう叫んだフェルナンドの瞳は真っ直ぐで、顔は涙でぐちゃぐちゃで。自分の代わりにずっと愛して欲しいと言って死んでしまった母親と重なって見え、エレノスは声を失った。

フェルナンドはふらりと崩れ落ちるように椅子に座ると、俯いたまま言葉を続ける。

「……クローディアとの間に生まれたアルメリアも殺されました。ヴァレリアンと結ばれた今、あの子に会うことはもう二度と叶いませんが、クローディアが幸せになってくれるのならっ…」

(…………アルメリア?)

エレノスは長い睫毛を揺らし、フェルナンドと目を合わせた。

アルメリアという単語は、初めて聞くものではない。そう遠くない日に、弟のローレンスの口からも聞いたものだ。


いつだったか──クローディアの身に何かあった日のことだったとエレノスは記憶を巡らせる。

あれは、クローディアが怖い夢を見たと泣いていた日だっただろうか。寝起きの姿のまま、建物の外へと駆けて行って、大泣きをしていたのだ。

あの後、エレノスはローレンスと共に兄ルヴェルグの部屋を訪れ、その事についてローレンスが報告をしていた。


──『クローディアが寝起きで僕のところに来るなり、大泣きしたのです。オルヴィシアラとはどうなったのか、アルメリアのことも訊かれましたが、一体どのような夢を見たのやら…』