二度目の人生とは、どういうことだろうか。そう問いかけるべきか否か、考え込んだエレノスへと、涙で濡れた青い目が真っ直ぐに向けられる。

「言い方を変えましょう。私は時を遡って参りました。…最悪な結末から」

「……俄には信じ難い話ですね」

「信じられないのが当たり前です。ですが信じていただきたいのです。これはクローディア皇女殿下とも関係しているので」

フェルナンドの口から愛する妹の名が出た瞬間、エレノスは顔色を変えた。何を馬鹿なことを言っているんだと心の片隅で思っていたが、妹が関係しているのならば話は別だ。

エレノスはフェルナンドを見つめ返し、ごくりと唾を飲み干した。

フェルナンドはしばらくの間、紅茶が入ったカップをじっと見つめていたが、皇帝が皇宮の外に出たことを報せる鐘の音が鳴り響いた後、ゆっくりと顔を上げた。

「時を遡る前、私は──ヴァレリアンに殺されました」

「……ヴァレリアン殿下に?」

フェルナンドは黙って頷く。

「あの子は…ヴァレリアンは、自身の容姿のことで国中から疎まれていたので、その復讐をするために王家の人間を皆殺しにしたのです。それだけではなく、裏で繋がっていた反国教団体らを率いて戦をも起こし、皇女殿下の御命をも奪ったのです」

エレノスの脳裏に、金色の髪の義弟の姿が浮かぶ。

帝国の皇家の一員となったリアンは、妹をよろしく頼むと言ったエレノスに、真摯な眼差しで「はい」と頷いてくれた。

そんな人が、王家の人間を根絶やしにしただけでなく戦を起こしただなんて。