「……俺も、こんな兄が欲しかった」

ぽつりと、リアンは小さくこぼす。
リアンが兄から貰えなかったものを、当たり前のようにローレンスはくれるものだから、そう呟かずにはいられなかった。

「…何を言うのかね。殿下はクローディアの夫となったのだから、僕の弟でもあるのだよ?」

そう言って、ローレンスはリアンの両手を掴むと、力強く引っ張り上げた。

初めて会った時から変わらない、自信に満ち溢れたローレンスの笑顔が眩しい。自分もこんな風になれたのなら、弱い自分とさよならができるだろうか。

「今日は正午から祝いの謁見、夜は成婚祝いのパーティーもあるのだから、背筋を伸ばして前を向いてくれたまえ。…君はもう、帝国の皇族の一員なのだからね」

「……はい」

リアンがローレンスの言葉に頷いたと同時に、部屋の扉が開いた。現れたのはクローディアだった。急いで来たのか髪が少し乱れている。

「リアン、ここにいたのね。それにローレンス兄様まで」

「やあディアよ。ご機嫌はいかがかな?」

クローディアはリアンとローレンスを交互に見て微笑んだ。二人が一緒にいることにはもう驚かないようだ。

「おはよう、ローレンス兄様。起きたらリアンがいなかったから、探しにきたの」

まさかここに居ただなんて、とクローディアは笑うが、それを聞いたローレンスはピクリと片眉を上げると、にっこりと微笑んだままリアンの両肩を掴んだ。