「さすがは皇女様。優雅で美しいステップですね」

家族と講師以外の人間に初めて面と向かって褒められたクローディアは、頬を赤らめながら微笑み返した。

「それは、王太子殿下がリードしてくださるからです」

「いやいや、私なんて緊張しすぎて、皇女様の足を踏んでしまわないかヒヤヒヤしていますよ」

「ふふ、何を仰るのですか」

クローディアはまた笑った。こんなにもリードが上手だというのに。優雅に踊るエレノス、楽しそうに踊るベルンハルトとは違い、フェルナンドのダンスは堂々としていて、例えるならば乗馬をしている時と胸の高鳴りが似ていた。


曲が終盤に差し掛かった頃、フェルナンドはクローディアの体力を気遣い、二階のテラスへと連れて行った。建国千年を祝う日である今日は、城の庭を開放して民に料理を振る舞っており、数えきれないくらいの人々が城を訪れていた。

二人でその光景を眺めていると、ふいにフェルナンドはクローディアに向き直り、掬い上げるようにクローディアの手を取った。

「クローディア皇女」

はい、とクローディアは返したが、ちゃんと声に出せていたか分からなかった。自分へと注がれるフェルナンドの眼差しが真剣で、熱を帯びていたからだ。

「私の伴侶になっては頂けませんか?」

「………え…?」

伴侶。それはつまり、フェルナンドの妻になってほしいということ。突然の求婚に、クローディアは息を飲んだ。