「…もうアルメリアは来年まで咲かないのね」

唐突に春の花の名を口にしたクローディアを、リアンは不思議そうな目で見る。

「アルメリアが好きなの?」

リアンの問いかけに、クローディアはゆっくりと頷いた。

「ええ、とても。…愛しているわ」

いや、愛してあげたかった、の方が正しいかもしれない。

クローディアは泣きたくなるような気持ちでリアンの青い瞳を見つめた。

夢の中で逢えた大きくなったあの子は、クローディアと同じ銀髪で、大きな菫色の瞳だった。フェルナンドの血を引いた要素はひとつもない容姿をしていた。

他人の目を真っ直ぐに見つめて話す子だった、と思う。そう、目の前にいるリアンのように、澄んだ瞳をしていた。

「…なら、来年の楽しみにしときなよ」

リアンの優しい声にクローディアは笑って頷いた。そのまま手を引かれるがままに、畦道をゆっくりと歩き進む。

そうしてしばらく歩いていると、少し先に小さな教会が建っていた。その近くでは子供たちが楽しそうにはしゃいでいて、クローディアとリアンに気づくと駆け寄ってきた。

「お姉ちゃんとお兄ちゃん、髪の毛とっても綺麗!」

歳の頃は五つか六つくらいだろうか。小さな子供の手を引いてやって来た十歳くらいの女の子は二人を見るなり、瞳を輝かせている。