「なんだかお二人が並んでいる姿と似ておられますね」

ふふっと館長はリアンに微笑みかける。光の髪の王と、月の女神のような妃。描かれている二人は、確かにリアンとクローディアに似ていた。

「…神じゃなかったんだ」

リアンは消え入りそうな声で呟くと、ゆっくりと目を伏せた。

「…人だったんだ。あなたは」

誰もが崇めてきたその存在のせいで、リアンは数え切れないくらい苦しめられてきた。だが、彼は神ではなく人だった。生まれて初めて知った事実が、リアンの胸を巣食う大きな何かをゆっくりと剥がしていくようだ。

この王はどんなことをしたのだろう。どれくらい生きたのだろう。人々の目にはどのように映っていたのだろう。

目を背けてきたものだけれど、今はただ知りたい。そう思えたリアンは、隣で自分と同じく絵画を見上げているクローディアの横顔を盗み見た。

白銀の髪と透けるような肌に、菫色の瞳、薔薇色の唇。絵の王妃と同じだが、リアンの目にはクローディアの方が何倍も何十倍も眩しく映った。

リアンの視線に気づいたクローディアが、どうしたのとでも言いたげな顔でリアンを見つめ返すと、優しい声で「リアン?」と奏でる。その瞬間、リアンは胸の辺りに痛みを感じた。

(……なんだろう、これ)

なんでもない、と小さな声で返して、リアンはクローディアから目を逸らした。

何故クローディアと目が合った瞬間、呼吸が重くなったような気がしたのだろう。

どうして今、心臓が速度を上げて動いているのだろう。いくら考えても、リアンには分からなかった。