「──ごめんなさい、お待たせしてしまって」
一旦部屋へと戻り、帽子とケープコートを羽織ってきたクローディアは、先に待ち合わせ場所にいるリアンを見て大きく目を見開いた。
先ほどまで赤い色のコートを着ていたリアンだが、今は自分と揃いの色のものを着ていた。お洒落好きなローレンスの案だとすぐに分かったが、家族でもなければ婚約者でもない相手とお揃いにするなんて、周囲からどのように思われることだろう。
城に閉じこもってばかりのクローディアは、周囲から何を言われようと耳に入ってくることはないが、リアンはどうだろうか。オルヴィシアラに婚約者はいないのだろうか。迷惑だと思ったりしないだろうか。
あれやこれやと考え始めてしまったその時、クローディアへと手が差し出される。
「お手をどうぞ」
リアンは少し気恥ずかしそうに微笑んでいた。会うたびに髪や顔を隠していたフード付きのマントはもうなく、綺麗な金色の髪が陽に照らされてキラキラと輝いている。
その姿がとても眩しく感じられたクローディアは、今日も変わらず冷たいリアンの手に手を重ね、馬車へと乗り込んだ。
「ありがとう、リアン」
どういたしまして、と小さな声で返したリアンは、クローディアに続いて馬車の中に入ると、向かいに腰を下ろした。


