「……すみません。格好悪かったですね。せっかく殿下に服を選んで頂いたのに」
王族なのだから俯かずに前を向けと遠回しに言われたような気がしたリアンは、フードで顔を隠して生きてきたことを恥じたくなった。
こんな髪が嫌で、それを見る自国民の人たちにも嫌な思いをさせてしまうから、子供の頃から金髪が見えないようフードを被って生きてきた。
だが、ここは王国ではなく帝国だ。オルヴィシアラの王子として見られていることを忘れていた。
そんな風に考えているリアンの心中を察していたローレンスは、まるで高価な糸のような金髪をそっと撫でて小さく笑う。
「いいや、殿下は格好いいとも。ただね、皇族というのは、国の顔として常に人に見られている。だから見た目や立ち振る舞い、言葉遣いは常にちゃんとしていないと、それだけで国の評価は下げられてしまうのだよ」
ローレンスはリアンとここ半月の間に親交を深めた甲斐あってか、どのような人物かは分かってきた。
見目麗しい容姿をしているが、自国では好ましく思われていないこと、それゆえにいい思いをしてこなかったこと。そのせいか、他人の痛みに敏感で、困っていたクローディアの手を引いて連れ出してくれたり、身を挺して庇ってくれたりしたこと。
たったの半月だが、ローレンスにとってのリアンは、とても好ましい人だった。だが、それは近くで見てきたから知れたことだ。


