「ふふ、さすがのクローディアも驚いたようだね。どうだい、よく似合っているだろう?」

クローディアはにっこりと笑って頷いた。どうかと訊かれたのは、リアンが今着ている上着のことだ。

昔から帝国の貴族階級以上の人間が着ている、通称帝国式と呼ばれているデザインのコートを羽織っているリアンは、思わず見入ってしまうほど似合っていた。

色合いからしてローレンスが選んだものだと思うが、赤はリアンの鮮やかな金髪と美しい顔を引き立てており、どこからどう見ても帝国の貴族にしか見えない。

「ええ、とってもよく似合っていらっしゃるわ」

「そうだろうとも! 何せこの僕が選んだのだからね!」

ローレンスはリアンを四方八方から見直すと、うんうんと何度も頷く。

「やはり僕の目に狂いはなかったな。次は何を着せようか…」

着せ替えという単語にリアンはビクッと肩を震わせた。今着ているもの──ローレンスを満足させたこの上着に辿り着くまで、リアンは着せ替え人形にされていたのだ。

リアンはぶつぶつと独り言を唱え始めたローレンスの手を握ると、困ったように眉を下げながら瞳を潤ませた。

「ローレンス殿下。貴重な体験をさせて頂き光栄ですが、私は五日後には帰国する身なので、滞在中に美術館や博物館に行ってみたいのですが…」

うるうるとした目で、しかも下から可愛らしい攻撃をされたローレンスは、ウッと怯んだ声を出す。

「…これは失敬。僕としたことが。…殿下があまりにも我が国のものが似合うので、つい興奮してしまってね」

ローレンスは空いている方の手で横に流している長い前髪をさらりと払うと、胸に咲かせている花を手に取り、リアンの耳の上辺りに挿し入れた。