クローディアはふふっと笑うと、リアンの右手を握った。相も変わらず冷たいその手が、クローディアは嫌いではなかった。

「変な顔したら美人が台無しになるから笑えって、リアンが言ったのよ?」

「…確かに言ったけど、それは男が女に言うものであって、ディアが俺に言うのは変というか…」

「どうして? リアンはとっても綺麗なのに」

侍女長より美人だわ、とクローディアは笑う。
リアンは頬や耳の辺りが熱くなるのを感じながら、自分よりも少し小さいクローディアの手を握り返した。

「…何言ってるんだか」

「もう一度言った方がいいかしら?」

「いやいや言わないで。言うなら女相手に言って」

クローディアは首を傾げた。何か不味いことを言ってしまっただろうか。建国際で再会した時のように、クローディアもリアンのことを元気づけたくて、リアンと同じ言葉を贈ったというのに。

「うーん」と唸り出したクローディアを見て、リアンはぷっと吹き出すと、繋いだ手を勢いよく引いて立ち上がった。リアンに引っ張られるようにして立ったクローディアは、バランスを崩してリアンの胸に倒れ掛かった。

それをしっかりと抱きとめたリアンは、肩から落ちかけているブランケットをきちんと羽織らせると、菫色の瞳を見つめながら緩々と表情を綻ばせた。