クローディアはゆっくりと立ち上がり、リアンに肩に掛けてもらったブランケットを広げ、上半身を隠すように包まった。その足元にいるリアンは、地面に縫い付けられたように座り込んでいる。

(…この間二人が部屋で揉めていたのは、そういうことだったのね)

クローディアがヴァレリアンの見舞いに部屋を訪れたあの日──フェルナンドとリアンが兄弟だと知った日、フェルナンドはリアンを蔑むような目で見ていた。

あの時は何故あんなことになっていたのか考える余裕がなかったが、今なら分かる。

フェルナンドはリアンが金髪だから、一人の人間として扱わないのだろう。金髪はオルヴィシアラの民が崇めている神と同じで、身につけてはならない色とされ、国で禁じられている。

リアンのことを「神に嫌われし者」と言っていたのもそれが理由だろう。

だからと言って、それで人を傷つけていいのだろうか。神というのはそんなにも偉い存在なのだろうか。

帝国で生まれ育ち、何一つ不自由のない暮らしをしてきたクローディアには、フェルナンドの考えは分からない。

「……助けてくれてありがとう、リアン」

クローディアはリアンに手を差し出した。助けられた側の人間がこうするのは変な感じがするが、そうしなければならない理由がある気がしたのだ。