「アンタらが祈りを捧げている神は、天災をなくしてくれたわけ? 病気で苦しむ人を救ってくれた? 子供にお腹いっぱいご飯を食べさせてくれた?」

庇われるようにしてリアンの後ろにいるクローディアは、リアンが今どんな表情でいるのか分からなかった。だが、淡々としていた声は震え、握り拳からは血が滲んでいる。

リアンは今怒りを堪えているのだ。偉大なる我らの太陽よと崇めている神とやらのせいで、理不尽な目に遭ってきた人がどれほどいるのか、リアンは身を以て知っていたから。

「神がお救いにならなかった命は悪しきものなのだ!それを定めと受け入れるのが、オルヴィシアラで生まれし者の使命!」

フェルナンドは両手を空へと伸ばすと、上を仰ぎながら声を張り上げた。その目に宿る異様な光を見て、クローディアは身を震わせる。かつて妻だったクローディアでさえ知らなかったその姿に、思わず喉を鳴らしていた。

「さあ、私と共にオルヴィシアラへ帰ろう、クローディア!!」

フェルナンドは両腕を広げ、クローディアへと向かってくる。遠いあの日のような、恍惚とした笑みを浮かべて。

だが、クローディアまであと少しのところでリアンが立ち上がり、フェルナンドの胸ぐらを掴んだ。

「ふざけるなよっ…!! 命は尊いとか、従わないから殺せだとか、言ってることとやってることが滅茶苦茶なヤツの何が神だよ!?」

「邪魔をするなヴァレリアンッ!!!」

「いい加減にしろよっ!!!」