「すまない、ディア。一人で喋り過ぎてしまった」

ローレンスは「これは僕の悪い癖だ」と苦笑する。
自分が答えられなかったばかりに、何も悪いことなどしていないローレンスに謝らせてしまったクローディアは、ぎゅっと唇を噛んだ。

「僕はただ心配なだけなんだ。君は僕の家族で、いつか僕の手を必要としなくなるその日まで、僕は君を守る義務があるからね。…もちろんどこかに嫁いだとしても、呼んでくれればいつでも飛んでいくが」

外交を行う政務官たちを導く職務に就いているローレンスは、忙しない日々を過ごしている。

女好きな皇子、変人奇人などとも言われているが、その裏では国のため、家族のために努力を積み重ねていることはクローディアも知っている。

そんなローレンスがクローディアの最期を看取ったことも憶えている。人前では決して涙を見せなかった兄が、自分を抱きしめ泣き崩れていたことも。


呼吸が止まったあの日、ローレンスはなぜ王国に来ていたのだろうか。もしかしたら知らぬうちに逢いたいと言い、それを誰かが伝えて呼び寄せてくれたのだろうか。

なんて、都合のいいように考えてしまったのは、ローレンスがあまりにも優しく笑うからだ。

「僕らの兄たちは優しい。だが、優しさだけでは人を守ることはできないのだよ。エレノス兄上もルヴェルグ兄上も、君が泣いたら抱きしめ、宥め、涙を拭うのだろうが、それだけでは解決とは言えまい」

アーモンド型の瞳が柔らかに細められる。