死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


「まずは無事に建国際を終えられてよかった。何から何まで私の手足となり助けてくれたことに感謝する」

クローディアは室内にいる人間をぐるりと見回してあることに気がついた。

ここにいる人たちは皆ルヴェルグの真の意味での身内だったのだ。家族であるエレノス、ローレンス、クローディアは勿論のこと、帝都政務官長であるラインハルトと宰相のグラスター侯はルヴェルグが心を開く数少ない人物であった。

「勿体なきお言葉にございます。全ては陛下の采配あってこそ」

ラインハルトは椅子の上から深みのある笑みを浮かべると紅茶に口をつけた。 

「他国から来てくれた方々は、オルヴィシアラを除いて皆帰国されましたね」

エレノスの口から出たオルヴィシアラという単語にクローディアは微かに身を震わせた。フェルナンドはまだ国内にいるのだ。

「そう、それについて皆に聞きたいことがある。現在、この皇宮にはヴァレリアン殿下がいるのだが、ひと月ほど療養されることになった。そこで、ひと月後…殿下の身体が回復されたら、ここにいる面々で晩餐会を開こうと思っているのだが、どう思う?」

皆を集めてまで意見を求めたいことは、晩餐会の開催についてなのだろうか。クローディアは小首を傾げた。

これまでそういったことは外務官長官補佐の地位にあるローレンスと宰相と話して決めてきたことではないのだろうか。

「良いとは思いますが、ヴァレリアン殿下は大丈夫なのですか?…そういった場は苦手そうですが」

クローディアの疑問はエレノスによって払拭された。隣に座るエレノスが「殿下は我が国の皇女の恩人だからね」とクローディアにそっと耳打ちしたのだ。

(……なるほど、そういうことなのね)

皇帝の一存で決められることだが、ルヴェルグはヴァレリアンのことを聞いたから決めかねているのだろう。