郁の腕のなかに閉じこめられて、出られない。 出ようともがいても、郁の力が強くて。 「っ、郁っ、くるし……っ」 距離を置くって言ったはずなのに、これじゃあ正反対、ゼロ距離だよ。 それに、どうして、こんな急に。 今までだって、こんなこと、されたことない。 郁の様子がなんだかおかしい。 「せーら」 また耳もとで声がする。 くすぐったくて、目をきゅっとつむると。 「離れていかないで」 か細く揺れる、今にも泣いてしまいそうな声。