それでも今までと同じように、手を握って泣くことしかできない自分が───くやしい。
「───李衣。」
君は、ベッドに仰向けになっていて。
動かすことすら一苦労な医療機器に囲まれているなかで。
「今から……おれ…、ポエムったこと…言うから、聞いて」
「…なに……それ…っ」
「…うん。でも、どうしても……伝えたい…から」
まるで、私の前にしゃがみかけて頬を撫でてくれているような。
眉を寄せた顔をして、ゆっくり抱きしめて、覗きこむようなキスをしてくれる。
そんなふうに私の涙を拭ってくれる、温かくて優しい声だった。
「目の前に……、ずっと、夢みた世界が…あって…、おれが伸ばせない手を……きみが、伸ばしてくれて…、」
笑顔を見せて。
おねがい李衣、笑って───。
握った手から、伝えられる言葉ひとつひとつから、彼の気持ちが届いてくる。
私のぐしゃぐしゃな笑顔を見ることができた大好きなひとは、満足そうに言い切った。
「これのどこが───…“幸せじゃない”なんて、言えるんだ」
幸せの価値は、誰かが決めるものじゃない。
そもそも幸せに“価値”なんてものは存在するのだろうか。