「最初に手を差し伸べたのなら、最後までちゃんと面倒みろよな」


そう言って、西原くんはごまかすように笑顔を浮かべる。


だけどその笑顔は今まで見てきたもののどれとも違う。


自分の辛さを隠すような笑顔で、胸の奥がチクリと傷んだ。


「私は見捨てないよ」


思わずつぶやいた。


西原くんの表情が驚きへと変わる。


一度出してしまった言葉をもうひっこめることはできなかった。


私は自分の心臓が早鐘をうち始めるのを感じながらも言葉を続ける。


「私は子猫を見捨てたりしない。1度関わったんだから、この子が大人になるまで世話をし続ける」


それは子猫へ向けて言った言葉じゃなかった。


西原くんも理解してくれたようで、隣でふっと息を吐きだすのがわかった。


「俺は子猫よりもずっとやっかいだよ。学校では氷王子なんて呼ばれてるし」


「それもどうせ誰かが考えたあだ名だよね? それなら、そんなの覆しちゃえばいいよ」


氷王子。


氷のように冷たいから、氷王子。