極甘恋愛短編集

ずっとにぎられている手に汗をかいてきてしまい、私はそう言って離そうとした。


けれど、しっかりと握られた手は簡単には離されない。


「俺、美奈子に伝えたいことがあるんだ」


「な、なに?」


人気者の聖也と廊下で立ち話をしていることで、徐々に注目を集め始めている。


私はすでに居ても立ってもいられない気分だった。


今すぐここから逃げ出してしまいたい。


だけどこの手は離したくない。


そんな気持ちだ。


「もう、無視とかすんな」


「う、うん。わかった」


それならもう十分に伝わっていることだった。


「俺にとってお前は特別だから」


「うん」


それも、もう……。


え?


今なんて言ったの?