極甘恋愛短編集

暗闇に突き落とされてしまったような気分になったとき、聖也が私の手を掴んできた。


強引に引き止めるようなやり方じゃない。


やさしく包み込むように握られてハッと顔を上げた。


涙でにじんだ視界の中に微笑む聖也が見えた。


え……。


怒ってないの?


てっきり呆れて怒っていると思っていたので、更に混乱してしまう。


聖也はほほえみながら「なんで泣いてんだよ」と聞いてくる。


私は慌ててもう片方の手の甲で涙を拭った。


「えっと、聖也が呆れて怒ってると思ったから」


「そりゃ、無視されてちょっとはムカッとしたけど、でもそれくらいで怒らないだろ。俺たち幼馴染なんだから」


その言葉が胸に突き刺さる。


幼馴染。


やっぱり自分と聖也はそれ以上の関係にはなれないんだろうか。


恋人とか、そういう……。


「あ、あんまり近くにいると他の女の子たちに勘違いされるよ?」