極甘恋愛短編集

用事があると聞いて聖也が私の手を離した。


そっけない態度に胸がチクリと痛む。


そのまま私に背を向けた聖也の腕を、今度は私が掴んで引き止めていた。


心臓は今にも爆発してしまいそうなほど高鳴っている。


それでも、私は聖也の腕を離さない。


聖也が何度もそうやって私を引き止めてくれたように。


「どうした?」


聖也が立ち止まり、驚いた表情をこちらへ向ける。


「あ、あの、さっきは、ごめん」


ぎこちなく言葉をつなぐ。


「教室で、無視するみたいになっちゃって、ごめん」


うつむいたまま聖也の顔を直視することができなかった。


聖也が今どんな顔をしているのか、確認することが怖い。


「ほんと、それだよな」


呆れたため息とともに吐き出された言葉に、全身が氷りつく。


やっぱり聖也は私を怒っていたんだ。


教室で話しかけて堂々と無視されたのだから、怒って当然だ。


こんな状態じゃ聖也に私の気持ちを伝えることはできない。