極甘恋愛短編集

謝らないといけないことがあるのに、全然言葉が出てきてくれなくてもどかしい。


「そんなに慌ててどうしたんだよ」


いつものようなぶっきらぼうな声。


だけどそれは私だけに向けられた言葉だ。


普段自分から女子へ話しかけることがない聖也が、唯一話しかけてくれている。


「えっと、ちょっと、用事が……」


違う。


そんなことが言いたいんんじゃないのに、言葉が勝手に出てきてしまう。


ちゃんと聖也と向き合いたいのに、どうしても逃げ腰になってしまう。


と、その時だった。女子トイレのドアが開いて中から若葉が出てきた。


若葉は私と聖也を交互に見たあと、私に視線を合わせて来た。


気が付かれてないように小さくガッツポーズを作って見せて、そそくさとその場を離れていった。


そうだ。


このままじゃ今までとなにも変わらない。


せっかく若葉が私の背中を押してくれたんだから、ちゃんと前に進まなきゃ!


「あっそ」