胸の奥がギュッと切なくなる。


どうして今までなにも気がついてあげられなかったんだろう。


聖也は私のために色々なことをしてくれていたのに!


私はただの幼馴染だからという理由だけで片付けていたんだ。


「どうしよう若葉、私聖也のことなにも知らなかった」


「そうだね。それに自分の気持を知ろうともしてないんじゃない?」


ツンッと脇腹を突かれてまばたきをする。


「聖也くんに彼女ができなくて安心したのは、ただの幼馴染だから? 本当にそれだけ?」


聞かれてまた胸の奥がギュッと切なくなった。


私は聖也を取られたくないと思った。


どれだけ可愛い子が相手でも、どれだけ性格のいい子が相手でも、聖也だけは譲れない。


聖也は物じゃない。


だからこそ気持ちを伝えて、理解してもらわないといけない。


「私、ちゃんと聖也に伝えなきゃ……!」


グッと握り拳を作って、私はトイレから出たのだった。