「うそ、そんな……」


つぶやいてから今までの聖也の態度を思い出してみる。


毎朝起こしに来てくれて一緒に学校へ来て、気がついたら聖也のまわりに女の子たちがいるから、教室に入るまでには距離ができている。


だけどそれは聖也が話しかけているから集まってくるのではない。


いつでも女子たちが勝手に集まってきていたのだ。


「もうちょっと聖也くんのことを見てあげなよ」


若葉が呆れたため息を吐き出して言う。


私と聖也はずっと一緒にいた。


お互いのことはなんでも知っていると思っていた。


だけど距離が近すぎるからこそ見えなくなってしまうものもある。


あの時、つい白猫を追いかけて車道に出てしまったときもそうだった。


聖也はちゃんと私のことを見ていてくれて、手を引いてくれた。


それなのに私は聖也のことをちゃんと見てこなかったんだ。


「女の子たちに囲まれたときに美奈子が巻き込まれないように、わざわざ距離を取ってることにも気がついてなかったんだ? 

あんなにわかりやすかったのに?


距離を置いていたのも、私のため……?