すると、一輝は少し顔をしかめた。
「姫乃の親が医者で、金を持っているからだよ。オヤジは金の為ならなんだってする。アホみたいにな」

「そうなんだ……、一輝はお父さんと仲悪いんだね」
言葉にすると、心がチクりと痛む。

「まぁな。……って自慢するところじゃねぇけど」
一輝は、ソファの背に寄り掛かった。

「俺は、ベタベタ俺に近づいてくる姫乃が心底嫌いだった。嫌で嫌で仕方なくて何度もオヤジにそのこと言ったけど、聞き入れようとしなかった」