私が寝不足で朝からボーっとしていなかったら、こんな大事なことを聞き逃さずにすんだのに……!
私のバカッ! と心の中で叫び声をあげる。
「えーっと、その……」
もごもごと口を動かしていると、肝心の一輝の姿はもう無かった。
「そ、そう! 実はお母さんが具合が悪くなっちゃって、私が家事手伝いしなきゃならなくなったの! だからごめん、一緒には帰れないんだ! また明日っ、勇飛!!」
「あ、おい!」
勇飛の止める声が聞こえる前に私は席を立ち、鞄を掴んで教室を飛び出した。
廊下をパタパタと走って、一輝の姿を探す。

