『ああ。適当に、俺の女のフリをしてくれればいい』
それから私は、自分の部屋でパジャマから制服に着替えて、そろーりと玄関から出た。

真っ先に視界に入ったのは、家の前に停車している一台の黒い車。
全開の車の窓からひょこっと顔を出したのは、学校と変わらない雰囲気の一輝だった。

「姫華、俺の隣に乗れ」
「う、うん」

車のドアが開かれて、私は緊張気味に後ろの座席に座る。
チラリと見ると、ちょっとガラの悪そうな40代くらいの男が運転席にいた。