私は、地べたに這いつくばっている1人の不良の男子生徒を上から目線で見下ろす。
不良の男は鼻から赤い液体を流して身体を震わせていた。

「うわ~、またやっているよ~」
「桜音さんって、怖いよね~」

同じく登校して来たクラスメイトのヒソヒソ声は、今の私には聞こえない。
喧嘩の理由は、数分前。

正門前で女子生徒たちがこの不良男子にしつこく絡まれていたから。
私に、この世で一番嫌いな物は? と聞かれたら即答に“不良、ヤンキー”と答える。