私は思わず息を呑んだ。
「だけど、もうダメかと思ったとき、俺は剛(ごう)さんに救われた」

「剛……、さん?」
「あー、姫華は知らねぇか。俺が銀蘭族の総長になるまえの代に総長を務めてた人だ。めちゃくちゃ喧嘩強くてさ、俺をボコボコにした男たちをいとも簡単に倒したんだよ。それで俺は何とか命拾いしたって訳さ」

「その剛さんって人は、今どこにいるの?」
すると、一輝はさらりと言った。

「死んだよ。暴走族の抗争で頭打たれて。病院に運ばれたけど、目を覚ますことはなかった」