勇飛は珍しく、ばつの悪そうな顔をして口を開いた。
「アイツ、ずっと欠席してたと思いきや、急にノコノコ現れていい迷惑だぜ」

「えっ! 勇飛、あの人のこと知ってるの!?」
「はぁ!? アイツ、新島一輝(にいじま いつき)は、俺たちと同じクラスだぞ!?」

「ええっ! そ、そうなの!?」
私と勇飛は、教室に続く廊下を真っすぐ歩きながらそんな話をしていた。

「新島は、銀蘭族(ぎんらんぞく)に属していて、しかも総長。冷酷男って呼ばれてる」
「ぎ、銀蘭族ってまさか……、暴走族?」

「そうだ。喧嘩の構想が絶えない幽蘭族(ゆうらんぞく)よりはマシだけど、恐ろしいのには
変わりない。アイツが言ってたこと、姫華は気にすんな」