僕がそういうと彼はギョッとした。
「なんで!?」
「なんで、かぁ。強いて言うなら贖罪かな」
話の意図がわからないのか彼は少し考え、
「食材・・・料理?」
と呟いたので
「それ、意味、はき違えてる」
速攻で否定した。

「え、」
「贖罪っていうのは簡単に言えばこれをするから罪を見逃してくださいっていう感じ。
ギブアンドテイク、みたいな」
「ギブアンドテイク、」
「そう、突き落とそうとしたっていう罪は見逃すからさ、友達になって3年間、僕を
いじめから守ってよ」
「は?」
ものすごく引き攣った顔をしてた。
これはかなり傷つくな。
(かなり類に影響受けちゃったな、僕)

「というのは冗談で、でも友達になって欲しいっていうのは本当。」
「どうして?」
「宮本くんは僕に謝ってくれたから。
自分が助かりたいとか、許してもらえば今
までのはチャラ、とか邪な気持ちが見えないから。それと、単純に仲良くなりたいなって思ってるんだ」 
僕は手を出す。

「でも、俺いじめたんだよ」
「いじめっ子といじめられっ子が仲良くなっちゃいけないなんてことはないでしょ?」
そう言うと宮本くんは狼狽えため息をつき
僕の手を握る。
「こんな、強情な人だっけ?」
僕の電話が鳴った。
「ご、ごめんね、ちょっと出ちゃうね」
携帯を見るとあれからかなり時間が
経っていた。

(ま、舞)
「ど、どうし」
「どうしたのじゃないでしょ?」
舞の声はゆっくりだった。
(あ、怒ってる。声の裏に黒いオーラ
を感じる)
「遅れるとはメール見たけどここまで遅れるなんて思わなかったな、先生たちもキレ気味でさ。類たちも不機嫌なんだ。もちろん私も。別に雪希の学校生活に文句言ってるわけじゃないけど、誰か欠けても成り立たないって分かってくれないと」

「ご、ごめんね舞。こっちも今終わって
すぐに行くから!」
「早くしてね」
最後まで怖いオーラを醸し出しながら
舞は通話を切った。
(めっちゃ怖かった、じゃなくて!)

「ごめんね、宮本くん。ちょっと、いや、
かなり急がなきゃいけなくて」
中原は足踏みしながら
「え、うん」
「それじゃあまた明日。」
階段を駆け降りて
「うわっ!」
ドサっと音がしたので見ると、
中原は座り込み、腰をさすっていた。
「ど、どうしたの」
「急ぎすぎて、終わりかと思ったらもう一段あってこけた。あ!」

大きな声で言ったと思ったら階段を駆け上がってきた。
「教室にカバン忘れた!」
横を通り過ぎたと思ったらすぐに戻ってきて
「それじゃあ、また明日!」
また階段を駆け降りていった。
(忙しい人)