放課後、帰ろうとする中原を呼び出し
罵倒した。でもそれはひっくり返せば羨ましさの本音だ

「気持ち悪いって言ってんの。」
(羨ましい)
「女みたいに髪を伸ばして」
(髪を伸ばせて)
「女みたいな小物を持って」
(可愛いものをもてて)
「恥ずかしくないの」
(羨ましい)
「親は、親は俺を認めてるのか」
それを言った瞬間中原は顔を歪ませた。
(もしかして失言しちゃった)

それでも彼は認めてくれる人がいるから好きを貫けているとはっきり言った。
親に見限られても好きを貫く彼。
親に見限られたくなくて偽る私。
決定的に違うのは

ー芯の強さー

その芯の強さが
「羨ましい」
溢れた本音にハッとして口を塞ぐが
もう遅かった。
「羨ましい、僕が?」
(まぁいいか)
私は話した、家のことを。
そしたら不思議そうな顔をして
(勘づかれたかな)
「ごめんね、俺、女の子なんだ」

「・・・え、うん。えっと、それで?」
「も、もっとリアクションがあっても
いいと思うんだけど、」
そんなこと言われてもなぁ
「人は見た目じゃないでしょ。
まぁそれは僕がいえたことじゃないけど」
彼、いや彼女は戸惑っていたが
「ねぇ失礼なこと言うけど、名前、
聞いてもいい?」
少しためらったが
「み、宮本 竜也(みやもと たつや)」
「よろしくね、えっと、」
(なんて呼ぼう、下手に呼んだらクラスメイトから変に思われるかもだし)

「普通に宮本でいいよ」
悩んでいるとキッパリ言われた。
「あ、うん。宮本くん」
「あのさ、中原。」
急に宮本くんは伏せ目になった。
「ごめん。」
「え、」
「あの時、階段で、背中を押して」
「あ、」
「羨ましく思ったのと同時に妬ましいとも
思っちゃって、一歩間違えたら、大怪我、
最悪なこともあったかもしれないのにって。すごく後悔してる。謝って済む話じゃないのはよく分かってる。でも、
本当にごめんなさい」
そう言って宮本くんは頭を下げた。

「頭を上げてよ、宮本くん」
静かに言うと彼はゆっくりと頭を上げる。
「一つ、聞いてもいいかな、」
なるべく刺激しないように優しく声をかける
と頷いた。
「僕の教科書をボロボロにしたのは
宮本くん?」
そう聞くとものすごい勢いで頭を振る。

「そっか。僕はね、階段から突き落とされかけたことよりも教科書をボロボロにしたことを怒っているんだ。僕の仲間に迷惑をかけちゃったからね。」
一呼吸おいて
「ねぇ僕と友達になってくれない?」