「る、類。舞、雪希も」
俺の前に3人は現れた
「な、なんでここに」
「まぁ細かいことはいいじゃん」
舞はサラッと言った
(細かいか?)

「人の家に勝手に上がり込んで、何しにきた。というかどこから入ってきた」
父さんは類たちを指差して言った。
「すみません、玄関が空いていたので上がらせてもらいました。何しにした、ですか。
俺たちの仲間を迎えにきたんです」
類は笑顔であっけらかんに応えた。
仲間、どうせ口先だけだと思ってしまう俺は
捻くれてるな。
こんな俺が自分が1番大嫌い。

俯く俺に雪希と舞が軽く肩を叩く。
「では、俺たちは失礼します。」
俺は類に手を引かれて家を出る。
後から来た雪希と舞。雪希は俺の荷物を肩にかけている。
「ごめん、みんな。迷惑かけて」
呟きに類にたちは顔を見合わせ笑う
「蓮にとって迷惑だと思っても俺たちは
迷惑だなんて思ってない」
「え、」
「それに、認められないって言ってたけどそれは違う、俺たちはとっくに蓮を認めているよ。蓮にとって、親に認められることが価値観なら俺はそれを否定する」
類は首を振り、雪希に視線を送る。

「親に認められなくてもいいんじゃないかな。なにも認めてる存在が親だけって縛りはない。兄弟でもいい、祖父母でもいい、
友達でもいい、仲間でもいい。」
雪希は微笑んだ、が

「どうして、どうして俺を認めてくれる?」
「どうして、かぁ」
視線を落とし項垂れる俺に
今度は舞が話し出す。
「認めるってさ、実際は結構難しいよね。
だってこれをこうしたら認めるって基準がないんだもん。でも、好きだよ、私たちは蓮のことが大好きだよ。大好きだから一緒にいたい。活動したい。これだけじゃだめかな?」
舞は頬を掻き、眉を下げて言った。

(こんな、こんな近くにいたんだ。
認めてくれる、いや、
認めてくれていた存在が3人も)
「ありがとう、認めてくれて」
「僕たちだけじゃないよ」
「え?」
訳がわからないまま、寮へ戻る俺たち。

テーブルの上には大量の
「これは?」
「ファンレターだよ」
類はそう言って一つを手に取り俺に渡す
宛名はRainbow Roseの蓮くんへ。
シールを丁寧に剥がし便箋を読む。

ファンレターを書くのは初めてでこれで合っているのかわかりませんがどうしても伝えたくて出させてもらいました。
デビューライブを娘と一緒に見ました。
初めてのライブで緊張しているのか
声も振りも震えているのを感じました。
でも頑張っている姿に勇気をもらいました。
最近は仕事と家事の板挟みで軽いノイローゼ
気味でしたか、Rainbow Roseの特に蓮くん
に前を向ける力をもらいました。
ありがとうございます。
前回のライブで姿が見えなかったので
心配しました。学業との両立、大変かもしれません。私も娘も応援しています。 

丁寧な字で綴られた便箋、封筒の中には
俺の担当色のクレヨンでがんばれと拙い字で書いてあった。

(俺を認めて、応援してくれる人がこんなにいるんだ)
感無量で潤む目を擦る。
「これでも、まだ自分は認められてないって思う?」
類の問いに首を振る。
(誰かに認められたくて
俺はアイドルになったんだ)