翌日は休日で2人とも暇だと言っていたから3人で病院へ。
病室の前の名札には
「高坂 蓮、」

恐る恐る入ると頭に包帯を巻いた彼の姿が。
点滴をしてベットで規則正しい
呼吸をしている。
(オレンジ、間違いない。
夢で見たのはこの人)
「蓮先輩だったんだ」
ポツリと呟いた声に反応したのは雪希くん。

「蓮がどうしたの?」
「あ、いや、なんでもないよ」
慌てて首を振ると今度は類くんが
「まだ、起きないね」
「そうだね」
「先輩はどういう人?」
「よく舞をからかってた」
「か、からかってた?」
斜め上の答えに反応が鈍る。
雪希くんはクスクスと笑う。
ふと類くんを見ると、神妙な顔をしている。
「舞、あのね」
そしてなにがあったのか話し出した。

ライブ中に事故が起きたこと、
照明が私に直撃寸前のところを
先輩が助けたこと、
自分が怪我したにもかかわらず私の名前を
叫んでたこと。
(それって)
「私の、せい?」
「舞?」
俯く私に雪希くんは心配そうに名前を呟いた。
「私のせいで先輩は怪我したの?
私が、あそこにいたから、
私の、せいで」
「舞」
類くんは肩に手を置き私を呼ぶ、
ハッとして、前を向くと少し怒っていた。

「それは少し違うんじゃないかな、
蓮は自分の意思で舞を守ったんだ、
仲間だから。
それを自責するのは、蓮に失礼だと
思わない?」
「そう、だね。ごめん」
類くんの目を見るのが少し怖くて
伏せ目がちになる。
面会時間いっぱいまで、ベットの周りで本を読んだり各々好きなことをしていた。

(あなたの瞳を見たら、声を聞いたら思い出せるのかな)
(俺も雪希も歌もダンスも上手くなったんだよ)
(あとは蓮と舞がいなければ完成しないんだ)


ずっと暗くて、でも暖かい不思議な場所。
俺はなんでここにいるんだっけ?
・・・そうだ、舞を庇ってそれで意識が
遠のいて。
舞、大丈夫か、雪希、泣いてないかな。
類、薄れる意識の中で俺と舞を呼んでいた。
他の人たちにもたくさん迷惑をかけた。
父さん、いや、きっと父さんたちは心配なんかしていない。
だって、認められてないから

お見舞いに来ていた彼女たちが帰って、ふと彼の手が少しだけ動いた。

帰り道、類くんと雪希くんは話しながら前を歩いている。
頭の中でシャボン玉が割れたように沢山の情報が流れ込んでくる。
反射的に歩みを止めた私を少し先を歩いていた2人は足を止め、振り返る。

「舞、」
「どうしたの?舞」
(そうだ、私は)
「Rainbow Roseの日比谷舞」
そう呟いた私に2人は不思議そうな顔をしたがすぐにハッとした。

「舞、もしかして」
「僕たちのこと」
「待っていてくれてありがとう、類。
そばにいてくれてありがとう、雪希」
呼び捨てで確信に変わった2人。
雪希は私に抱きついた、

「よかった、思い出してくれて、舞。
ずっと寂しくて不安だった。」
雪希の頭を撫でていると、
類に頭に手を置かれる。
「時間はかかったけど、安心したよ」
慈しむような表情で心底安心したような声でそう言った。
類は手を離し、雪希も体を離した。

「「おかえり、舞」」
明るい声でそう言った2人に
「「ただいま」」
と満面の笑みで答えた。