ユキは顔を隠すように俯き、
舞台袖に走っていく。
「あれは、なに?」
マキはぽつりと呟くとライトは消えた。
ライトがついたらマキはいなくてユキだけだった。
「私はまた1人になってしまうのでしょうか」
ぽつりとつぶやきまたライトは消えた。

次に出てきた時はローブを脱いだ格好で、
マキに近づく。
半ズボンにハイソックス、
ワイシャツにネクタイを締め
膝あたりまでの薄手のコートを羽織っている

「ごめんなさい、初めてあなたに会った時
私は嘘をつきました。」
「え、」
「あなたは病の原因が私だと聞いた
と言いました。あれは本当のことです。
あの、病が流行り始めたのはいつからでしょうか。」
「えっと、確か私が、生まれる少し前だと
母から聞いて、・・・」
そこまで言ってマキは息を呑んだが。
「そうです。病は私が生まれてから流行りはじめました。いわば呪いです。
街から離れた場所に暮らしていても、亡くなる方は後を立ちません。」
(街の人たちの命をとるか、自分の命をとるか、トロッコ問題だ。どちらに舵を切って 
バットエンドだ、)

「あなたは不思議な方だ。私のそばにいても病に侵されることはないように
見受けられます」
「そういえばそうですね。私はあなたと暮らすことに、最初は抵抗がありました。
でも、今はあなたと暮らすことを心地よく思っています。」
「ありがとう、マキ」
ユキは照れた顔で、笑った
(すごいな、みんな役に溶け込んでる、
これ、本当に小学校のレベルか)

穏やかな日常がこれからも続くと思っていた矢先。
街の人たちが塔へ押し掛けた。 
「街を脅かす存在は排除する」
万乗一致の結果らしい。
「殺されるくらいなら自分で死んでやる」
そう言って、ユキはマキの手を引き
時計塔の頂上にある見張り台へ。

「ドアには鍵をかけたけどすぐに壊される」
ユキは目を瞑り、
「マキは私のことを覚えていて、」
ユキはマキに微笑み手すりに足を
かけようとした。
瞬間にマキはマキに抱きつく。
「マ、真希さ、マキ!?」
「もう私に家族はいません。
ならいっそ、私もあなたと飛び降ります。」
「わかって言ってる?」
少し低い声でユキは言った。
「あなたとならばなにも怖くない。
何故だかワクワクしています、」
ユキはマキの手を取り甲にキスする仕草を
した。
「私と一緒にいてくれますか、マキ」
「ええ、ユキと一緒にいたい」
ライトが消されもう一度ついた時には2人は倒れていた。
そして再び会場は闇に包まれ、
数秒後スポットライトは語り手を照らす、

「マキとユキが亡くなってから、あの街が
病に侵されることは無くなったようです。
街の人たちはしばらくユキをバケモノと
呼んでいましたが、呪いを持ったユキと
間接的に2人の命を奪った街の人たち。
本物のバケモノはどちらなのでしょうか」
語り手は不気味や笑みを浮かべるとスポットライトは消え、再び闇に包まれた。