中から出てきた人はローブを羽織っており、
フードで顔を隠している。
「あなたはこの時計塔の主でしょうか」
マキは息を呑んだが、すぐに気を取り直し 緊迫した声で言った。
「主なんて滅相もない、私はここに勝手に住み着いているだけです。立ち話もなんですし、どうぞ入ってください、」
マキが中に入ると黒子の人が現れ、ドアと外壁のハリボテを運び、家の中にシーンが
変わった。

「街が病に侵されていることはご存知ですか」
「ええ、知っています。活気のあった街は
今は静寂に包まれています。」
「あの、病の原因は塔の主にあると
聞いたのですが」
「そうなのですか、でも、申し訳ありません。私はその原因を何一つ知りません。」
「そう、ですか」
「ご足労頂いたのに申し訳ありません」
「いえ、私こそお邪魔してしまって
ごめんなさい、あの、
そろそろ失礼しますね」
ドアに手を掛けたマキの手を主は掴む。

「のこのこやってきてそのまま帰られると
思っているんですか?」
「え?」
「あなたにはここで暮らしてもらいます」
それから数週間が経った。
また語り手がやってきて
「主はずっとローブ姿で過ごしていました。
マキは不思議に思いながらも、刺激しないよう黙って過ごしていました。マキは主に触れたことがありません。主はマキが触ろうとすると、過剰に反応して避けるのです。」
戻っていった。
(ちょくちょく出てくるな、語り手)

「街の様子はどうなっているのでしょうか」
マキは塔の頂点の部屋の中から
思い馳せていました。
ドアの開く音がして、マキは階段を降りる動作に合わせて、黒子が部屋のハリボテを持っていくと一階のハリボテが出てきた。
「おかえり、ユ、キ。ユキ、どうしたの」
ユキと呼ばれた主は肩を押さえている。
「触るな!!」
マキの腕を払い、その反動でフードが脱げる。
「あ、」
ユキの顔の左側には水の波紋が重なったようなものがあった。
(あれ、絵の具か。落ちるのか?)