僕たちはそれぞれ忙しく、レッスンの時間が合わない。学芸会、学校祭のほうが忙しく、
レッスンでも、うまくいかないことが多い。
「みんな学祭などのイベントがあるのはわかるけど、無理はしないでね。ライブ前に体調を崩したら本末転倒だから」
「「「「はい!」」」」
杏奈さんは優しく言った。
「それでは今日はここまで。
明日から来月の三連休までのレッスンを少し短縮します。みんな学校イベントも全力で
やって欲しいから」
「「「「はい!」」」」
(劇のセリフも頑張って覚えないとな)
そして準備したり、
練習したりであっという間に当日。

当日、俺たちは雪希の学校へ。
外では何もやらないのかどこにでもあるような敷地だ。
「楽しみだね、雪希たちの劇」
「まぁそれはそうだけど、
人に揉まれないように気をつけて」
「え、どういう意味」
「そのまんま」
テンションが上がってる舞に類は釘を刺す
(楽しそうだな、類)

雪希たちのクラスの演目は
「美女と野獣、改め美少女と美少年」
「、なんて?」
俺の声に舞は聞き返す。
「だって、そういうタイトルなんだよ」
「色々、自分たちで変えたのかな」
今度は類が反応する。
体育館は真っ暗で適当に座る。
「次は6ー2の劇です。
タイトル、美女と野獣改め美少女と美小年」
アナウンスがあり、語り手の男子が
マイクで話し始める。
「昔々、とある街は流行り病に侵されていました。これは街を救おうと立ち上がった美少女マキと病を治す鍵を握る美少年ユキの
物語です」
語り手の男子は舞台袖に歩いていく。
(美女と野獣ってこんな始まりだっけ?)
そして幕は上がる。

主役であろう女の子は薄いピンク色の
エプロンワンピースを着ている。
「この街は静かになってしまった。今まで
賑やかだったから、こんなに静かなのは少し不気味に感じてしまいます。」
段ボールで作られた家の前でたたずみながら
少女は言った。

「いけません、こんなことではいつでも希望をもっていなさいと母との約束なのに」
自分の頬を軽く叩き立ち上がる。
場面は切り替わり病気の母親の看病の
シーンになる。
懸命の看病も虚しく母親は亡くなってしまう
悲しみに打ちひしがれていた少女。
だが容赦なく朝日は登る。
気力がないまま数日が過ぎたある日。

珍しく騒がしい街の広場に足を運んだ少女
「どうしたのですか?」
「ああ、マキ。実はこの流行り病の原因は塔にあるらしいんだ」
「まぁ、あの塔ですか?」
訳がわからないところにまたさっきの語り手の男子が歩きながら語る。

「塔というのは街のはずれにある、時計塔のことです。時計塔といっても壊れており動くことはなく名ばかりの建物です。
その時計塔は森の中にあり周辺には
バリケードがあり、近づくことができません。」
男子はまた舞台袖に消えた。
「私が謎を解き明かしてみましょう」
「駄目だよ、危ないよ」
「後悔するぞ」
マキがそういうと街の人たちは次々と止める
マキは首を振り
「このまま放っておけば、苦しむ人が増えるだけです。大丈夫です、悲しませる人はもういませんから」

マキはそう言い、時計塔へ行く。
いくら木の影で待っていても、出てくる気配はない。
「大丈夫、どんな時でも希望をもって」
マキは胸の前で手を握りそう呟く。
そして時計塔の中に入るドアノブに手を掛ける。
「おや、これは綺麗なお嬢さん。
私になにか御用でしょうか」
その声はどこか嬉々としているように
聞こえた