曲が終わり、
「昨日より格段に良くなってる。
やっぱり
チーム名が決まったからかな」
「どういうこと?翔」
「俺たち、
デビュー直前に決まったって言っただろ?
それまでは動きは合っていても目指しているものが違う、
って感じだったんだ。」
「そうだったんだ」

「でもチーム名が決まり、みんなの目指すものが一つになったって感じがして、そこから絆ができたり、かな。」
「元から仲が良かったってわけじゃなかったんですね」
そう言ったのは蓮。 

「特に俺と司は方向性が真逆だったんです。完璧を目指す俺と羽目を外す司。
小さなことでよく衝突しました。」
「そうだったんですね、目指すものが同じになった感じだったんでしょうか。」
類の言葉に涼太さんは頷き
懐かしむように言った

「多分ね。俺だけ突っ走ってもダメなんだなって思ったのもその頃だったからな」
「正反対だからなんでしょうね。よく振り付けが正反対になるように組まれています。」
「さて、そろそろ俺たちが魅せようか、
準備して」
日向さんがパンと手を叩きそういうと皆さん、位置につく。
レッスンしたり、たまに休憩がてらにゲームしたりあっという間に合宿は終わった。
合宿から数日後。

「ライブあるから今のうちに片付けておいた方がいいよ、宿題。ちなみに俺は終わった」
「終わらせた」
「ほとんど終わった」
「自由研究、読書感想文っていった最後まで残りそうなものは終わりました」

「なんか一個だけ不穏な発言なんだけど、
雪希。もしかして、終わってない?」
核心を突かれた雪希は項垂れる。
「ま、まぁ合宿の他にレッスンもあったし」
「ごめん」
「時間はまだあるし、がんばろうよ」
「うん」
そして終わっている課題とそうでない課題を仕分ける。
「ちょっと見ていいか?」
「うん」

蓮は雪希に許可を取り、夏休み課題用冊子をぱらぱらめくる。
「なんだ、だいたい終わって、ん?」
国社数のページは埋まっているが、
理のページだけ真っ白だ。

「僕、理科は好きじゃなくて。極端だよね」
「大丈夫、私も歴史は赤点ギリギリだから」
「おい待て、便乗すんな。それにそれは威張っていいことじゃない」
雪希が自嘲し、舞が便乗し、蓮がツッコむ、
「まぁまぁ、とりあえず、片付けようよ。みてあげるから」
「ありがとう、類」

私達は雪希の勉強をみる
「ここ違うぞ」
はずだった。
「なんでこうなった」
「だって雪希だって3人に囲まれたら怖いだろ?」
「それはそうかもしれないけど」
今、蓮に歴史を教えられています。
あの時、類は一対一の方がいいということで私たちは部屋を出た。
でも、蓮は歴史教えてやると言って私の部屋に押しかけた。
机に向かっている私と横に立って、
教える蓮。
「というか、蓮は大丈夫なの?」
「完璧なのでお構いなく」
涼しい顔で答える。

私の夏休み課題用冊子の歴史のページを見てひと言。
「舞、ムラありすぎだろ」
「悪かったですね」

2時間ほど宿題をして終わりが見えかけた頃
「類、てさ」

「ん?」
ベットに体重をかけ理科の教科書を読んでいると、
雪希が呟いた。
「なに?」
「教えるの、上手いよね」
「お世辞?」
「いや、別に」
きょとんとした目で俺を見る。
「すごいよね、類は。料理できて、レッスンでも褒められて、やっぱり完璧なんだね」
褒めているつもりで言ってくれてるんだと
思う。でも
「完璧ほどつまらない人間はいないよ」
「え、」
「完璧ってことは非の打ち所がないってことだろ?俺に言わせれば、没個性だよ」

吐き捨てた言葉に雪希は
「なんでそんなこと言うの、没個性なんて」
「俺がそうだからだよ」
「え?」
「ちょっと自分語りしてもいいかな」
「どうぞ」
理科の教科書をベットの上に置く。