片手に靴を持って
「っと、」
立ち上がり歩き出す。

(何年ぶりかな。)
翔の背中は暖かくて、
程よい振動で眠気に誘われる。

「舞」
「ん?」

急に意識が覚醒した。
寝そうになったなんて思われたくない。
「挑戦状。Rainbow Roseの白紙を
撤回するって話が出てるんだ」
「え、」

「蓮くんのしたことは許せることじゃない。でも、俺たちは仲間が雪希くんと
同じ状況になったら冷静でいられるか、殴らないか、考えたら絶対に無理で。

相手の立場になって考えるってことが
できてなかったんだ。
同情も慈悲も情けもかけないって
言っておいて都合が良すぎることは分かってる。

撤回したからって事実は変わらない。
都合が良すぎる、兄という立場を使ってる、
そう言われるかもしれない。

アイドルになるって聞いた時、
ワクワクしたんだ。
同じステージに立てるんじゃないかって。

でも、Rainbow Roseて決まった時、
ライバルになったんだって、ゾクゾクした。
ひとりのアイドルとして歩いていくんだって。

舞、他のライバルと戦いたいっていうのが
Rainbow Roseの総意なら撤回する。
よく考えて」
「分かった」

家の近くで下ろしてもらい裸足で
家に入る。

「お帰り、舞」
類は玄関で待っていてタオルを持っていた。
「足、拭きなよ」
「ありがとう」

靴を玄関に置いて
足を拭いて、お風呂場に直行。
シャワーで足裏を綺麗に洗って
ソファに深く座ってから、
ゴロンと横に倒れる。

「類」
「ん?」
「なんで帰ってくるって分かったの?
しかもタオル持って」

「それはね」
類はスマホを操作して私に突き出した。
「はぁ!?」

「あ、」
類のスマホを奪いスクロールする。

館内にいる私と翔の後ろ姿、
アイスの食べ比べをしてる写真、
さらにおんぶされてる写真。
全ての行動がネットに流れていた。

翔のアカウントでアイスの自撮りが追加された。
ハッシュタグには、新作アイス、
美味しかった、妹とデート。

「な、なにこ、はぁ?!
全部筒抜けじゃん!!」

コメント、いいね、スタンプ
その数字は止まらず、さらにランキングにまで
載る始末。
しかも兄妹デートがトレンド入りした。

どっちも顔が良すぎる。
控えめに言って神。

クールなのに妹の前だと、
構ってちゃんでかわいい!

なんだかんだ受け入れている舞も
かわいい、ツンデレかw

アイスの交換とか仲良すぎない!?

翔くんのセンスいい!
こんなお兄ちゃん欲しかった。

躊躇ってもおんぶされる舞。
兄の背中には勝てなかった。

圧倒的に多いシスコンという言葉。
シスコンw

シスコンすぎて笑うw

そういえば、前に妹が可愛すぎるって
ポロッとこぼしてたような

こんなにかわいい妹だったら誰だって
シスコンになるw

翔くんの公式プロフィールに
シスコン追加されてるww

恥ずかしさで手に力が入り
スマホがミシミシと音を立てる。
「俺のスマホ、」
「あ、ごめん。ありがとう」

スマホを返して仰向けでため息をつく。
「類、聞いてほしいことがあるの」
「なに?デートのこと?」
「違う、そうじゃない」

「あのさ、」
挑戦状の白紙が撤回かれることを話す。

「なるほど、それはまた都合がいいね」
「うん、翔もそう言ってた。」

その後に帰ってきた蓮と雪希と話し合って
翔に電話する。

どうせなら直接みんなの意見を聞きたいと
事務所で会う日を決めた。

STEPの事務所はとても大きくて
広くて迷いそうだったけどホールで待っていた
司さんが案内してくれた。

ある部屋でSTEPの7人とRainbow Roseの4人。
とても張り詰めた空気の中、

「挑戦状の白紙の件、
考えてくださってありがとうございます。
でもごめんなさい、お断りさせてください」