舞が帰ってきて数日後。
「ねえ舞」
「ん?」
「舞ってさ、僕のことどう思ってる?」
「え、いきなりどうしたの?」

舞は苦笑しながらも答えてくれた。
「うーん、
小悪魔?時々あざといよね。
でも、私はそんな雪希が好きだよ。
自分を貫くことができる、
真っ直ぐな雪希。
私も見習いたいって思ってる」

舞の言葉に嘘偽りはなかった。
「、そっか、嬉しいな。
そんなふうに思ってくれるなんて。
でも小悪魔は侵害だな。」
(やっぱり)

「舞、目を閉じて」
「え?うん」

そう言って目を閉じる舞。
(信用した人を疑わない。
舞のいいところだけど心配にもなる)

前髪を横に流して抑える。
額に触れるか触れないかくらいに
キスをする。
そして

唇を離して
「てい」
デコピンした。
「いたっ」

「いきなり何するの、いや、
それよりも、今、キ、」
「油断大敵だよ。額のキスは友情」
片目を瞑り舌を出す。
(僕は小悪魔らしいから。
・・・これだけは許してね)

ー類の部屋ー
「類、僕が舞のこと好きだって
知ってるじゃん」
「うん」
「でも前に、すっぱり諦めたらって
類が言ったの覚えてる?」
「覚えてるよ」
「僕、諦めるよ」

類はベットに座って隣をポンポンと
叩く。隣に座って仰向けになる。
(気づいた、気づいちゃった、
気づきたくなかった!)

花火大会の日、舞を見た時から。
僕が舞に向ける目を蓮を向けていること
が分かってしまった。

なんでこんなところは聡いんだろう。
逆に舞は人の変化に敏感なくせに
恋愛面では疎い。
僕は一方通行で。2人は相思相愛で。

「伝えないの?」
「伝えないよ、絶対に。
舞は優しいから僕の返事を考えちゃう
でしょ?
余計なことに気を遣って欲しくない。」
「自分の気持ちなのに余計なことって
いうのはどうかと思うけど」

「僕のことで揺らがせたくない」
「雪希が決めたなら何も言わないけど、
一つだけ、聞いてもいい?」
「いいよ」

「もし、舞が恋人と喧嘩して泣いたら
どうする?」
「そうだね、相手に癪だけど話くらいは聞いてあげようかな。
誰かに話すだけで自分の中でも整理
できるから」

「てっきり奪うって言うかと思った」
「1時の感情なんて後から
虚しくなるだけでしょ。
横恋慕して関係を拗れさせたくないし
好きな人にはやっぱり笑顔でいて
もらいから。
隣にいるのが僕じゃなくても
舞が笑顔なら潔く身を引く。
だからこれからも舞にとって小悪魔で
僕はいるって決めた」 

自分に言い聞かせるようにも聞こえる
その声は、
「ねぇ、類」
「なに」
「・・・泣いてもいい?」
「お好きにどうぞ」

雪希は起き上がり体を丸めた。
体を震わせて声を押し殺して泣く
雪希の背中をポンポンと2回叩く。

雪希が満足して部屋に戻った。
(失恋、か)

楓さんからの手紙で
俺がアイドルだということを驚いた事、
そして宅配便からジャージが帰ってきた