「高坂の言い分は最もだ。
だけど更生の余地を彼に与えては
いけないのかい?」
校長先生のゆったりとした言い方は
諭すように聞こえてしまう。

「更生って・・・あ、・・・っ、」
蓮は何を言えばいいのか分からないのか
喘いで拳に力を込める。

校長先生から変な圧を感じていると
類が口を開く。
「俺はそれで構いません。
雪希と彼女のそばにいなくなるのなら」
 (え、類?あ、)

類の目が笑っていない。
何かをする気だと直感した。
「この件はこちらで処理するから口外
しないでね」
「わかりました。
では俺たちは失礼します」
「な、類!」

まだ言いたりなさそうな蓮の腕を掴み
引きずって校長室を出た。
「失礼しました」
頭を下げて、校長室をでる。

その時、ちょうど5時間目始まりの
チャイムがなる。
類は教室に戻らず生徒指導へ。

使用中と札をひっくり返して中に入る。
「類!」
引きずられていた蓮は思い切り腕を
振り払う。

「類、本当にあのままでいいと
思ってるの?」
「・・・まさか」
顔は見えないけど楽しそう

「いじめとかってさ、
先生に言っても何もしてくれないこと
あるけど、なんでだと思う?」
「え、えっと、・・・忙しい、から?」
急に振られた私は疑問系になって
しまった。

「うん。それもある。
教師の仕事って俺たちが思ってる以上に多いからね。
じゃあいじめが世間に出るのは事が
大きくなってから。理由は?」

次に振ったのは蓮
「校内で揉み消そうとする、から」 「正解、公になったら自分の昇進や
学校の今後に関わるからね。
さっきの更生の余地。
生徒の今後のためじゃない。
結局は自分の生涯しか見てないんだよ。当たり前だけどみんながそう
いうわけじゃないよ」
類は清々しい顔で言い切った。

「それで、類は何するつもり?」
痺れを切らした私はイラつきながら
聞いて類が取り出したのはスマホ。

「Stargazerの時を思い出して」
「・・・あ、」
「!」
 蓮も分かったらしい。

「蓮が殴った事も、校長室の事も
録音してるんだ」
蓮は微笑んでいた。多分私も。

6時間目は流石に出ないもまずいから
ちゃんと出席した。

放課後、それぞれの仕事を終わらせて
病院に行くと雪希は起きていた。
「あ、来てくれたんだ」

点滴をしている雪希、脱水で少し痩せたように見えるが元気そうでよかった。
隣のベットにいる蓮の妹はまだ 
眠っている。
「蓮、ごめん。茉里さん、
巻き込んじゃって」
「え、いや気にしないでいいよ。
雪希も大変だったんだし」

「でも、なんで巻き込んだって
思ったの?」
「類、・・・向こうが用があったのは
僕だけだから。
・・・好きな格好するのにこんな覚悟を持たないといけないのかな」

雪希の目に光はなかった。
あの時みたいに。
「誰かを巻き込むのなら僕は、
1人の方がいいのかな」 

「そんなことないよ」
私たち3人の誰でもない声。
隣のベットを見ると目を覚ましていた。

「「茉里さん/茉里」」
「巻き込まれたのはタイミングが
悪かっただけだし。それに雪希、
助けようとしてくれたじゃん。
少しは覚えてるんだ、
私のために必死に動いてくれたこと」

「それは、・・・何かしないと
茉里さんが死んじゃうと思って。
それに、茉里さんが言うほど動けなかったよ。でもそう言ってくれて嬉しい。
ありがとう」
「雪希くんは謙虚だね」