僕が目覚めた時、学校では

「なぁ、お前だろ?
雪希を、茉里を閉じ込めたの」
蓮が1人の男子生徒の胸ぐらを掴んで いる。
「お、俺じゃない。
あいつが勝手に行っただ」
汚い言い訳を殴ってさえぎる。
私も類も止める気はさらさらない。

「勝手に行った?
見え透いた嘘を言うなよ。
雪希のクラスに聞きに行ったらさ。
お前が雪希に体育倉庫に行くように
言ったって」

「そんな、僕は」
またさえぎる。
「誰が喋っていいって言った」
蓮のことだ。相当手は抜いてると思う。
いや、思いたい。

「猛暑日、しかも窓もない。
そんな場所に30分以上閉じ込めて。
マジで無事だと思ったの?
ここにいるってことはそれなりに
頭いいんだろ?なのになんでそんな簡単なことも分からない!
・・・何か言い分は、」

「あ、あいつが悪いんだ。
あんなあべこべな奴なんかが茉里さんと
仲良くするから。でも閉じ込めることはしてない。ドアを閉めただけ」

3度目の強打。今度は胸ぐらを掴んで
なかったから吹っ飛んで壁に強打した。

「そんなくだらない、醜い嫉妬で
あいつらを、ふざけるな」
ゆらゆらと近づく蓮の口元は笑っていた

「その茉里って子もいたみたいだけど」
「か、彼女がいたのは知らなかったんだ。そこは誤算で。で、でも昼休みが
終わる前に鍵を開けようとした。
でも鍵が誰かに借りられてて・・・あ、」
(やっとボロを出したな)

「ほら、鍵もお前じゃん。うそつきが」
それに鍵がなかったって責任転嫁も 
いいところだろ」
「こ、こんなことしてこのまま
 芸能界にいられると思い上がらないで
 ください」
「は?」
「僕を殴ったじゃないですか!?
 立派な暴行罪ですよ!」

「暴行罪ねぇ」
 蓮は顔の横スレスレに足を突いた。 
ヒュッと喉がなるのが分かった。
(流石の私もあれは怖いな)

「お前は人を殺しかけた自覚はない
のか。暴行よりもっとヤバイって
思わないの?感覚が麻痺してるんだな。
世間が忘れたとしても俺たちは絶対に
忘れない。一生許さないし、
死んでも恨む。」
急に低くなった蓮の声にその生徒は泣いた。

「芸能界にいられない。
下手をしたらそうなると思う。
だからって、私は蓮が手を出さなければ、私たちが止めてればなんて
思わないってはっきり言える。
仲間があんな目にあって無視できるほど私たちは落ちぶれてない」

最悪、挑戦状が通ってたとしても
白紙になることも考えられる。
でもそうなっても構わない。

蓮が、類が殴らなくても私が殴ってた。
「お前たち、なにやってる!!」
心を読んだようなタイミングの良さ
入ってきた先生に蓮は無視。
類は影で舌打ちをした。

そして私たちは校長室に連れて行かれた。
生徒を殴った蓮、そして連帯責任として
私たち3人は、理由が理由で情状酌量で
1週間の自宅謹慎。そして彼には退学。

「退学だけですか?」
口を開いたのは蓮。
「速報にも同学年の男子生徒としか
出ていない。それじゃこの生徒がこの先、
なんの障害もなく生きていけますよ。
自分のした罪の重さをなにも理解しない 
まま」

「でも、未然に終わりましたし」
オロオロとしている学年主任を蓮は睨む。
「終わったからもう問題視しない、ですか?
死にかけたんですよ!?あの2人は!!
確かに殴った俺にも非はありますよ。
でもそれ以前に、嫉妬っていうふざけた理由で命を奪いかけたそいつの方がよっぽど非があるんじゃないんですか?」