一昨日、新しい命が宿っていることを
知った。 
この横からみて薄いお腹にいるのは
不思議だかとても嬉しかった。

連続で書いてある日もあれば飛び飛びの日もある。
飛ばし読みでページをめくる。

先生に聞けば生まれてくる前に性別を
知れることは分かってたけどあえて
聞かなかった。
無事に生まれて来てくれればいい。
正直にいって性別なんて興味がない。

妊娠6ヶ月、
お腹も大きくなり、胎動もかなり
感じられる。とても活発なようで、
たまに衝撃がすごいけど元気なんだと
嬉しくなる。

男の子なら翔、女の子なら舞。
どちらも自分の夢や目標に向かって 
羽ばたいてほしいという願いで
考えた名前。
欲をいえばどちらも無駄にしたくない。
(7年後に叶うけどね)

この子も私と同じ轍を踏むのかなと
微かな疑念がある。
そんな先のことを考えても意味はない。
決めるのはこの子なんだから。

ついに一昨日生まれて来てくれた。
男の子だった。とても可愛くて親バカになっちゃったねと2人で笑う。
小さい、でも確かに生きている重さが
あるその存在をどんな大人になるのかなと2人して想像が膨らむ。

「お兄ちゃん、ただいまー」

慌てて引き出しにノートをしまう。
「あら、ここにいたの?翔」
(よかった、ギリギリ間に合った)
「うん、救急箱ない?捻挫しちゃった
から湿布ほしくて。
腫れてはないんだけど」
「わかった」
クローゼットから救急箱を取り出した。

湿布をもらい部屋に戻った。
翌日、他にもあると思った俺はノートを
探したが出てこなかった。

目が覚めると変わらない病室。
(いろいろ思い出してるうちに
寝ちゃったのか)
点滴の針も取ることができて体調も
回復してきた。

数日後に退院できて、久しぶりの寮だ。
「おかえり」
「ただいま、日向。」
中にいたのは日向だけだった。

「ごめん、俺が休んでる間に
日向たちの予定もめちゃくちゃに
しちゃって」
「そんなこと気にしないでいいよ。
今まで予定が狂ったことなんて
何回あった?これもそのうちの一つに
しか過ぎないんだから」
「でも」
「謝罪や後悔なら後でいくらでも聞く。今はただ休んで欲しいんだ。
俺たちもファンの人たちも。
社長は俺たち全員に1週間の休暇を
言い渡した。
みんな今は羽を伸ばしてるよ。
翔の場合は5日間だって」
「ありがとう、日向」

荷物を置いて、寮を出て
俺は家に向かう。
お袋が死んでから入らなかった部屋。
部屋は埃が溜まっていて、
一歩歩いただけで埃が舞う。
(ここだけあのまま時間が止まった
みたいだ。ベットの位置も空のペットボトルも変わらない。壁掛け時計は寿命なのか動かない)

とりあえず窓を開けて、7年ぶりの
新しい空気を入れる。
(確か、日記は)
引き出しにあった3つ目のノート。
他の場所も探す。クローゼット、
ベットしたの収納スペース。
机の引き出し、本棚。

書きかけの19と書かれたノート。
(これが最後か)
事故の2日前で止まっている。
どれだけ探しても1と2が見つからない。
(なんでこんなバラバラに
保管してるんだ?
1、2は結婚してからの日常が綴られて
いるとして。でもなんでこの部屋に
ないんだ?)

「まぁ、いっか」
ノートをまとめてベットの上に重ねて
家を出た。
寮に帰ったらみんなで退院祝いだからと
外食をした。

久しぶりにこんなに自分達のペースで
過ごせてとても楽しかった。
彼女が部屋に入る可能性を忘れていた。
「なに?このノートの山」