「この高校って特殊だよね」
「いきなりなに?」
衣装に着替えて屋上の扉に向かう階段を登っている時、ふと思い出したように
雪希が呟く、

「テストの配点とか」
(たしかに。
古文、現代分、漢文
細かく分けると国語で3教科だけど、
まとめて100になるように点数配分
されて。0.5点とか全部できて1点とか。成績表には面倒なのか
それぞれ細かくは記載されてないし。
他の教科を合わせても10教科は超える)

「それを考えると毎回満点取ってる
類ってすごいんだね」
さっきから楽しそうな雪希。

「あの、そろそろいい?」
先生がドアの向こうで顔を出す。
「あ、はい」
初めて屋上に入ると3mある緑の
フェンス。
(卒業写真とか特別な時しか入れないから汚かったらどうしようかと思ったけど
すごい綺麗に掃除されてる)

上履きを靴に履き替えてピンマイクを
して位置に着く。
カメラを回して、先生が指でカウント
をして曲を流す。

(昨日、一回やったけど歌詞もパートも
ダンスも思ったより覚えててすんなり
できて意外と体が覚えてるんだな)

新たに蓮と俺、舞と雪希で
ハイタッチするアレンジを加えたり
少しパートを変えたり
オリジナルでも新しい偶然と奇跡を
届ける。

曲が終わりカメラを止めた合図を見て、
安堵のため息をつく。
動画を無事に載せる事ができ、
6月30日まで非公開と表示されている。
(1日からか、そこから8月の30日までの再生数で決まる)

屋上から校内に戻り着替えて
学校を出る。
数日後の授業中、オレは別室で
追試を受けて安定の満点をだした。


追試を受けるまではクラスの男子に
色々、尋問を受けたが全て
「体調悪くて回答欄を間違えた」
と言えば
「蒼葉でもそんなことあるんだな」
「なんか蒼葉でもそんな凡ミス
するんだな」
笑いが生まれた。
(こっちから波風が立つことしなくて
いいよね)

「蒼葉、」
追試後、今1番会いたくない相手に
呼び止められる。
「麻倉、」
その顔はどこか勝ち誇っていて

「職員室で先生たちが話しているのを
聞いた。追試、満点だったって。
あの時は調子悪かったの?」
「・・・そうだよ、調子悪い時に
テストと被ったんだよ。
よかったじゃん、1番になれて」
(やばい、ちょっと八つ当たり
みたいだな。余裕ないって思われたら
どうしよう)

「蒼葉」
「ん?」
「今回、日比谷を抑えて学年1位に
なったけど、物足りなく感じた。
ずっと1位になりたいって思ってたのに。
それで気付いたんだ。
蒼葉と一緒に1位になりたかったんだ、て。」
「麻倉」 
「2学期の中間テストは、一緒に
1位になりたい。」
「え、あー、うん。そうだね」
歯切れの悪い返事、
麻倉は少し考えていた。

あれから数日後、
気温が上がり始め、夏服に衣替えをして
過ごしていたある日。
休み時間、教室で過ごしていたら
麻倉に呼ばれた。

「蒼葉、ちょっといい?」
「どうしたの?あ、誰か呼ぶとか?」
「違う、蒼葉に用がある」
「俺?」
麻倉は少し怒っていて
(知らないうちに怒らせたかな)
と、ここ数日を思い出していたが
これと言ったことはない。

「ごめん、蒼葉」