「ごめん」
「「「え?」」」
昼休み、私たちがお昼ご飯を食べていると急に雪希に謝られた。

「まず、誰に謝ってるの?」
「全員」
雪希の目は憂いを含んでいた。
(ますます意味が分からない)

「もしかして、中間テスト?」
図星のようで類の質問に肩を揺らす。
蓮も合点がいったようにあっ、と呟く

「学年10位以内に入れなかったから?」
頷く雪希にため息をつく。
「そんなこと?
テスト結果なんて一時なだけだから
気にしなくていいのに」
「そう、気にするのは2年になって 
からでいいんだよ。
2年は回りくどい説明文が多いから
そこだけ気をつければなんとかなる」
「それよりも終わったことをいつまでも気にするのは疲れるよ。
次、期末で果たせばいいんだよ」

類と蓮、私は胸の内を明かす、
それでも雪希の顔色は優れない。
どうしようかと3人で目配せすると、
ノックの音が響き
静かにドアが開きおずおずと
「失礼します」
と女子生徒が顔を覗かせる。

「あ、もしかして使う?
ごめん、すぐに退くね」
蓮が謝り私たちも片付けていると、
廊下から
「入らないのか?」
と先生の声が聞こえる。

「あ、えっと」
あたふたする彼に急いで、
お弁当袋を持って生徒指導室を出る。
「ごめんね、もう行くから大丈夫」

「悪いな、」
「いえ」
口だけの謝罪を流して指導室を離れる。

「雪希、知ってる?
リボンが青だったから1年生でしょ」
「うん、でも見た事ないかな。
別のクラスかも」
1年生はリボンが青、2年生は赤、
3年生が緑に決まっている。
男子のネクタイも同様。
階段で私たちは分かれた。

「あの人たちが、」
「ああ、現役のアイドルグループ。
人気らしいが俺にはさっぱり分からん」
「そうですか」
彼女は彼女達が歩いていた廊下を
見つめる。

数日後、衣装が完成してフィッティングをする。
「なんか懐かしい気がする。」
あの時、雪希はサイドテールだったが
今回は編み込みの2つ結び。
編み込みはかなり緩めで結んでいる。

「衣装だけなのに。それに髪型変える意味ある?」
「いつもと同じなんてつまらないじゃん。
それに当日、迷いたくないし」
「それはそうだけど」

類と蓮も着替え終わり合流する
「2人とも似合うね」
「蓮たちも似合ってるよ」
雪希と蓮は楽しそう。

「類、」
襟を触っている類に問いかける
「ん?」
「私たち、・・・どこかで会った事、
ない?」
「・・・え?」

一瞬だけ見せた戸惑いに何かあると
思った。でも
「なに言ってるの?
5年も一緒にいてどこかで見かけた、
とか?」
首を傾げて顔を顰める。
「そういう感じじゃ、」

「類!舞!それぞれ衣装の微調整
するって」
「いま行く!」
雪希に遮られて最後まで言えず類は
行ってしまった。
「あ、・・・」
(仕方ない。私も行こう)

歩いている類を小走りで追い越して
別の部屋へ。

(正直、焦ったな。
舞はあんな関係性は望んでいないのに
バレたら舞は・・・いや、舞じゃない、
俺が怖いんだ。拒絶される事が)