「うそ、」
廊下に張り出された中間テストの結果表に僕の名前はなかった。
(あそこまで、自分たちも忙しいのに
時間を割いて見てもらって結果がこれか)

よく見ると学年6位に茉里さんがいた。
(すごいな、茉里さん。
それに比べて、僕は・・・。)
他の学年の表を見にいくと
2年 学年1位 蒼葉 類   
   学年4位 日比谷 舞
3年 学年8位 高坂 蓮

(勉強だけが全てじゃないのはわかってる。でも、なんだろう。
・・・置いていかれてる気がする)

「また1位は蒼葉か」
「日比谷さんもすごいよね」
「蓮の奴。また10位以内に入ってる」
他の生徒のざわめきもあるのに3人の
名前ははっきり聞こえる。
「「「アイドルもしているのに」」」
僕は居た堪れず教室に戻る。

(3人は順位なんてそんなこと
気にしない。でも僕じゃない誰かが
チームにいたら自分の時間を有効に
使えたのかな)

教室で成績表とシートを受け取る。
(学年12位か。全体で見たら僕も十分
上位にいる。でも僕だけ2桁。)

シートを成績表に貼りレーダーチャートにそれぞれ線赤と青でを引く。
(どの教科も平均点は超えている。)
それでも自分が情けなく思えて
ため息をつく。

(春蘭男子校に行った咲くんと
スミレ女子高に行った竜ちゃんは
そんな悩みないんだろうけど)

卒業の日にそう提案されて
竜也で首を横に振り、竜(たつ)で
横に振り、問答を繰り返し最終的に
りゅうちゃんでやっと頷いた。

はじめての席替えで隣になった
茉里さんが元気よく
「ねぇ、中原くんってどんな感じ
だった?」
と聞いてきてそそくさと成績表を閉じる
「う、うん。まぁまぁ。
それよりすごいね、6位」
「ありがとう、」
そう笑った顔は悩みなんてないくらい
輝いていた。

同時刻、それぞれの教室
ー2年1組ー
「なぁ、類。」
「ん?」
クラスメイトが機嫌よく聞いてくる。
「さっき見たよ。結果表、すごいね」

ー2年3組ー
「日比谷さん、3位おめでとう」
あまり話さない麻倉くん。
「ありがとう」

ー3年1組ー
「学年成績10位以内キープのコツって
ある?」
「な、なんだろう」
前の席にいる女子。

「「「でも、恥ずかしくない?」」」

「え?」
「恥ずかしい?」
「なにが?」
その単語に三者三様に聞き返す。

「中原だっけ?同じチーム」
「学年一桁にも入れない」
「落ちこぼれがいて」
類はニコリと微笑み
舞はわざと音を立てて席を立ち、
蓮は睨んだ。

「俺たちは雪希の事を落ちこぼれなんて思ってない」
「私たちの仲に優劣なんてないよ」
「俺たちに同情でもしてるつもり?」

「「「俺たちの/私たちの仲間を
侮辱しないで」」」
類は冷やかな目で睨み
舞の声は怒気を含み
蓮は微笑んだ。

はじめて起こるのを見た生徒達は
(彼を、彼女を本気で怒らせないように
しようと)
一致団結した。