「ということになったんだ」
翌日の昼休み、いつもの場所で4人で昼食を取る。

「和解ってことでいいの、かな?」
舞は変わらないお弁当箱のおかずを頬張る。
「で、3人、雪希はどこに泊まったの?」
3人は顔を見合わせて、
目の前にいる雪希が話し出す。

「僕は咲くんの家に。
ばあちゃん家だと移動に1時間近くかかるからね。
急だったのに椿さんも嫌な顔しないで
迎えてくれて感謝してる。
今思えば家に行く前はよくばあちゃん家から
通ってたなって思う」
「そっか、というかいつのまにか名前呼びに?」
「卒業してすぐ、もう名前呼びにしない?
て宮本さんが」
「仲良さそうでなにより」
俺は舞に視線を向けると躊躇っているように感じた。
「私は何も変わらないかな。
昨日は帰ってずっと掃除をしてたよ。
どこも埃だらけで大変だった」
舞の声色は何も変わらない
(気のせい?)

〜回想〜
各部屋の窓を開けて空気を入れ替えてお風呂掃除、
水回りを綺麗にしてはたきを掛けて箒で掃いて
雑巾で水拭きと乾拭きを繰り返す。
「ふー、一階はこれでいいかな」

(次は2階、翔の部屋も軽く掃除しようかな)
先に自分の部屋を掃除する。
自分の部屋も埃が隅に溜まっている。
(お正月に帰らなかった余計だよね)

翔の部屋も掃除をする。
掃除機をかけて部屋を出る、
(翔の部屋はこのくらいでいいか)
つもりでいた。

「そういえばこの引き出しってずっと
しまってるけど何が入ってるんだろう」
翔が寮に入ってから掃除の度に
気になっていたのを思い出す。

一度開けようとしたら鍵がかかっていて
開かなかったからそれ以来触ってない。
(兄でもプライバシーはあるから
仕方ないと思ってたけど)

もしかしてという期待と好奇心で
一度引き出しに手を掛けるがやはり
鍵がかかっていた。

(まぁそううまくはいかないよね)
「いった、」
なにか踏んだ感覚があり見ると、
なにかのストラップ。
その先に鍵が付いている。

(掃除機かけてる時はなかったはず。
もしかして家具をずらした時に
出てきた?)
いけないことだとわかっている。
でも気になって仕方ない。

「ごめん、翔」
鍵を挿して回して引き出しを開ける。
「これって、」
写真だ。
沢山の家族写真が無造作に引き出しの
幅いっぱいに散らばっていた。
(懐かしいな、どこで撮ったのか
覚えてないけど。)
1番下にあったのは私が生まれた時、
腕に抱かれた私と幼い翔。
(患者衣だから撮ったのはお父さんかな)

その写真にお母さんの顔は写って
いなかった。
(わざとそうしたのかな)
写真を片付けて再び鍵をかける。

鍵のついてない上の引き出しを
開けようとしたが
(いや、これ以上はやめよう。
翔に悪いし)
と思いとどまり掃除機を持って
一階に降りた。
〜回想終了〜

「で、類は?」
「俺も家に帰ったよ。久しぶりに。
俺のところはあまり驚いてなかった
かな」
「ふーん」

仕事をして帰宅してを繰り返して
予定通りに終わったと類が七瀬さんからメールで知らされ、グループチャットで
俺たち3人も知り、翌日の学校帰りに
荷物を持って再び家に帰った。