ここからかよさんとたまきさんの口論は続き、俺たち兄妹は置いてけぼりで要約するとたまきさんの姉、あかねさんは 体が弱く病気がちだったらしい。
  

幼少期からたまきさんを俺に
あかねさんを茉里に当てはめたような
生活だった。

中学であかねさんが病気で亡くなり
それでもかよさんはたまきさんを本当の意味で見てはいなかった。

「母さん、覚えてる?姉さんが
亡くなった時、私と姉さんが逆だったらよかったのにって言ったこと」

ー茉里の代わりに死ねばよかったのにー
(あの言葉はたまきさんがかよさんに
言われた言葉と酷似してる。
でも、茉里は危なかったとは生きてる。
なんで死ねばなんて)

「母さんがそうやって私を育てたの!
それ以外のやり方なんて知らない!」
叫ぶたまきさんに疑問をぶつける。

「あの、横槍を入れることに
なるんですけど」
片手を上げると二人の視線は俺に向いた
「あのたまきさん、昔こう
言いましたよね。代わりに死ねば
よかったって。
あれはどうしてですか?」

たまきさんは鼻を鳴らして
「あの時は気が動転してたのよ。
可愛い娘が危ないと誰だって、
荒くなるでしょ?」
「それは息子に置き換えることは
できなったんですか?」
「あなたが生きていても私にとっては
さほど価値ないわ。
茉里の方が私たちにとって
価値がある存在なの」

それを聞いて茉里は勢いよく立ち上がろうとしたが肩に手を置いて制止させる。
「お兄ちゃん、」
「俺があなた達にとって価値がないのは十二分に分かっています。
でも価値は誰かが決めるものじゃありません。自分で決めるんです」

お盆に帰省した事を振り返る
「正直言ってあなたに期待されてないと
聞いた時はショックでした。
でも今はどうでもいいんです。
本当に認めてほしい人にだけ期待されて、価値があるって示してもらえれは
俺はそれだけで満足です」

ー大好きだから一緒にいたいー 
ー親に認められなくてもいいー
ーとっくに蓮を認めているよー 

この言葉が何度俺を前に
むかせてくれたんだろう。

「価値は自分で決める、」
たまきさんは呟いて
俺たち向きなおる。
「蓮、茉里。
私は子供の頃、母さんに
無下に扱われたようで嫌だった。
それで、あなた達に八つ当たりした。
こんな母親、あなた達は望まないと思う。でももう一度チャンスをください」

土下座をするたまきさんに
茉里と顔を見合わせる。
「正直、過去のことは消せないし、
私は許せないよ」
「俺も。散々トラウマを植え付けられた。土下座で払拭できると思ってる?」
たまきさんの肩は震えた

「でもこれからのことはいくらでも
変えられる。許したわけじゃないけど、もう一度、信じたいと思ってる」
「仕方ないな。
茉里がここまで行って俺が反対なんて
言ったら後味悪いでしょ?信じるよ、
仕方ないけど」

その後もかよさんとたまきさんの話し合いは続き、和解、とまではいかないが
少し親子間を修復できたらしい。